ロシアのパンと塩
Legion Mediaパンと塩で客人を迎える(これについてもっと知りたければこちらから)ことはスラヴ民族のもっとも知られた伝統であろう。今日この伝統は、外交使節の公式訪問を歓迎する時に残されている。そして、雰囲気を作るために民族衣装を着ていることも多い。しかし、日常生活にいては、何事も簡素化されるものだ。客として呼ばれた時は、主人に歓迎され、最高の食事でもてなされる。その後に主人はケーキを勧めて、動けなくなるまでお茶を飲むことになる(もしくはもっと強いものを!)。
ギターかアコーディオンを弾くことができるのなら、遠慮せずに持っていけばいい。ロシア人はホーム・コンサート(「クヴァルティニク」)が大好きだ。「クヴァルティニク」
そして、ロシア人は決して帰宅を促したりしない。つまり、夜は永遠に続くかもしれないのである。帰る前に、ロシア人は必ず一杯飲むことを勧める、「安全を祈って」と言って乾杯して、無事に帰宅できるよう祈ってくれる。
チャクチャク
Legion Mediaタタール族はロシアで2番目に大きい民族グループで、かつては客人を迎える時にはガチョウを丸ごと焼き、多くの、多くの美味しい料理をつくる(エチポチマクやチャクチャクの名は聞いたことがあるだろう)。そして、サウナの準備をする。今でも、都市生活者でもしばしば家に客を招いて、古い習慣の中で、最も大切なことは今でも受け継がれている。それは、「クチテネチ」という、「贈りもの」と訳されるものだ。客に呼ばれると、クチテネチを持っていくことになる。これは、みんなで分けて食べられるものであることが多い。客が帰るとき、クチテネチが入っていた容器には主人が美味しいものを詰める―手ぶらで帰すと言う習慣はないのである。
ヤクーチア西部のヴェルフネヴィルユイスク村で開催された「オロンホ」民族祭り
Yuri Smityuk/TASSおもてなしの精神というのは、ヤクート人(そして概して北方民族)の特性のひとつであり、それは、厳しい自然環境とそれぞれの集落が離れ合っていることに関係している。ごちそうだけでなく、ヤクート人は必ず地元のヤナギソウを煎じた熱いお茶を勧めるだろう。ヤクーチヤ共和国の首都であるヤクーツクでは、観光客向けのヤクートのお茶会体験ツアーさえあり、特別につくられた「昔風の」小屋でお茶を飲める。
チェチェンの特に山岳地帯に住む人にとっても客人が来ることは、いつでもとても名誉なことであるが、招待もされていないのに中庭まで入ることはとても無礼なこととされている。通常、客人に応対するのは家族で最年少の者である。チェチェン人の考え方は、一度でも家を訪れた人はすべて友人だ。面白いことに、古い慣習によれば、3日以上滞在した客人はその家の家事を手伝わなければならない。
庭に客人専用の建物がある家もある。祝い事の間は主人はドア近くの場所にいて、最初に立ち上がって客人を見送る。
チャムの中のネネツ人の家族
CliqueImages/Getty Imagesヤマル半島に居住する多くの先住民族のひとつであるネネツ人を訪問する時は、ドアをノックしたり、家人を呼び出したりしてはいけない。(アパートや家ではなく)遊牧露営地に招待された時は、最初にそれぞれのチャム(テント)を回ってすべての住人に挨拶しなければならない。
食事は野生動物の肉(鹿肉)、魚、ベリー類で、そしてもちろんハーブ茶が出され、茶碗をさかさまに置くまで注ぎ続けられる。ごちそうを断ることは礼儀に反する。料理が床に落ちたら「精霊に食事を与えるために」暖炉に投げ入れる。
また、ネネツの人と食事をしている時は決して歌を唄ったり、口笛を吹いたりすることは許されず、家人が皿を片付けるのを手伝おうとしてはいけない。ネネツ人はそうされれば幸運が逃げて行くと信じているのだそうだ。
ネネツ人は、客人に贈り物をすることが多い。ちょっとした装身具や他のお土産(手作りのものが多い)である。客人もまた家人に贈り物を持ってくる。
フォークグループが観光船を迎えいている(チュヴァシ共和国、チェボクサルィ市)
Legion Mediaチュヴァシ人はおそらくロシアでもっとも有名なビール醸造家である。客人はまず新鮮なビールを勧められる―女性に対しても―という伝統がある。チュヴァシ人の家を訪れる時は、手ぶらで行かずに、何かテーブルに並べられる食べ物を持参した方がよい。結婚式や民族的な祝日などの大事なイベント(たとえば、ウチュク)で訪れる時は、他にも多くの客が呼ばれているつもりで行こう。このようなイベントは通常「飲み物持参」(しかし皆で分け合って飲む)がルールであることが多い。
モルドヴィアの伝統的な料理
Fred Grinberg/Sputnikモルドヴィアには客として訪れる際の決まったエチケットがある。たとえば、招待されていないのに大きな家族のお祝いパーティーに行ってはいけないのだが、主人は往々にして親戚縁者だけでなく、近所の人も招待する―彼らは、誰とでも縁を大切にするのだ。
かつては、客人は村の入り口で迎え入れられた。食卓では、客人は常に一番良い席に座り、最高の食事でもてなされる。そして、もちろん、客人の方も家人に贈り物を持ってくる。そして伝統として客人が旅立つ日には家の掃除はしてはいけなかった。それは、客人が無事に帰宅できるためだ。もっとも今では、このような伝統ももっと柔軟に考えられている。
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