知っておくべき現代ロシアの建築家8人

A2M, Sergey Skuratov Architects
 信じがたいほど素晴らしいモスクワの高層建築や公共スペースを作っているのは誰なのか?

1. セルゲイ・チョバン(設計事務所SPEECH)

 世界でもっとも高い建物の一つである、モスクワ・シティのフェデレーション・タワー(374㍍)を設計したことで知られるセルゲイ・チョバン(1962年生まれ)は、現代の設計士の中でもっとも有名な人物の一人で、設計事務所SPEECHの創設者。

モスクワ・シティのフェデレーション・タワー

 ソ連邦崩壊後、チョバンはドイツに移住し、現在はモスクワとベルリンを行き来している。ドイツの首都ベルリンで住宅や公共施設(シェーネフェルト空港の前の広場、ユダヤ文化センター、建築グラフィック博物館)の設計、デュッセルドルフでオフィス(C&A)の設計を手がけた。ロシアでは、モスクワの有名なスポーツ施設であるアイスリンク「CSKAアリーナ」やカザンのウォータースポーツ施設、ソチ五輪のメディアセンター、そのほか複数の大都市で新たな住宅を設計している。

ベルリンの建築グラフィック博物館

2. ニコライ・シュマコフ(株式会社メトロギプロトランス) 

 おそらく、シュマコフ(1954年生まれ)ほど多くの地下鉄駅や交通関連施設を手がけたロシアの設計士はいないだろう。

モスクワ地下鉄フォンヴィジンスカヤ駅

 モスクワの20以上の地下鉄駅(ブティルスカヤ、フォンヴィジンスカヤ、シピロフスカヤ、パルク・ポベディ)、新空港施設ヴヌコヴォ1、巨大な卵の形をしたモスクワ北部の交通管制センター、モスクワでもっとも美しいとされるジヴォピスヌィを含むいくつかの斜張橋の設計を行なった。

3. アンドレイ・アダモヴィチとダナ・マトコフスカヤ(設計事務所A2M)

アンドレイ・アダモヴィチ(左)とダナ・マトコフスカヤ(右)

 設計事務所A2Mを立ち上げた若い2人の設計士は、最近ではもっとも大規模なものとされる軍事博物館の一つを設計した。モスクワ郊外のペトリシェヴォ村に作られた記念博物館は第2次世界大戦の英雄、ゾーヤ・コスモデミヤンスカヤに捧げられたもので、「ゾーヤ」と名付けられている。多くの評論家が、この博物館について、最近のロシアの建築物でもっとも印象深いものの一つと評している

「ゾーヤ」博物館

 このペアによる設計で超近代的な周産期医学センター、スポーツ施設、オフィスビルなどが建てられている。

アンドレイ・アダモヴィチとダナ・マトコフスカヤが手がけたオフィスビル

4. ドミトリー・リキンとオレグ・シャピロ(設計事務所WOWHAUS)

ドミトリー・リキン(左)とオレグ・シャピロ(右)

 モスクワの設計事務所WOWHAUSの開設者であるドミトリー・リキン(1966年生まれ)とオレグ・シャピロ(1966年生まれ)は2007年から公共スペース発展のトレンドを生み出している。才能ある若手設計士らとチームを組み、2人は放置されたままとなっている広場や河岸を地元の人々に愛される休暇の場所に変えている。

モスクワ工業博物館のアンフィシアター

 モスクワ工業博物館のアンフィシアター、トゥーラ・クレムリンの河岸通り、カルーガのイノベーションセンター、セヴァストーポリの公園など、いずれも木を多用し、非常に近代的で環境にやさしいデザインになっている。2人はゴーリキー公園の改修、モスクワのクルィムスキー河岸通りの改修にも参加している。

トゥーラ・クレムリンの河岸通り

5. ボリス・ベルナスコニ(設計事務所Bernaskoni )

 ベルナスコニ(1977年生まれ)は主に文化センター、教育センターの設計を手がけている。もっとも有名なものに、エカテリンブルクのエリツィンセンター(ロシアの政治史をテーマにした双方向型博物館)、スコルコヴォのイノベーションセンター内の超立方体、ロシア政府のプレスセンターがある。

エリツィンセンター

 ベルナスコニは自分のスタイルを超機能主義と名付け、建物の設計においてはデザイン性よりも機能性が重要だという考えを強調している。

スコルコヴォのイノベーションセンター内の超立方体

6. ニキータ・ヤヴェイン(設計事務所「スタジオ–44」)

 サンクトペテルブルクは素晴らしい建築物を誇る世界でもっとも美しい街の一つで、そこに新たな建築物や公共施設を設計するのは易しいことではない。しかし、そんな中ヤヴェイン(1954年生まれ)とそのチームは、エルミタージュ美術館の本館の大規模改修工事を一任された。

 ヤヴェイン指揮のもと、ペテルブルクでは街でもっとも新しいラドシスキー鉄道駅、ボリス・エイフマンダンスアカデミーなどが建設された。

ラドシスキー鉄道駅

7. ユーリー・グリゴリャン(設計事務所「メガノム」) 

 ユーリー・グリゴリャン(1965年生まれ)率いる設計事務所はロシアのミュージアム設計の旗手とも言える存在である。モスクワのプーシキン美術館の建物と敷地をつないで美術館都市を作り、モスクワ・クレムリン博物館の新館を設計し、カリーニングラードにトレチャコフ美術館の別館を建てた。

 2014年以降、「メガノム」はモスクワの河岸を環境にやさしい機能的な遊歩道に変えている。また1990年代末からはロシア全土で積極的な都市建設を行なっている。モスクワでは高級住宅コンプレクスをいくつも作り、ソチでは岩礁に似た一風変わった住宅を建て、またモスクワ郊外のバルヴィハにはコンサートホールも備えたショッピング街を作り、印刷会社「ウートロ・ロシイ」の歴史的景観を取り戻した。グリゴリャンとそのチームは、ニューヨークでもっとも高い高層ビル262 Fifthの設計を行うことになっている。

8. セルゲイ・スクラトフ(設計事務所Sergey Skuratov Architects)

 スクラトフ(1955年生まれ)は大きさの異なる建物からなる未来派的な住宅施設を設計している。遠くから見ると、サイズの違う図形が固まって、空中に浮かんでいるように見える。

モスフィルモフスカヤ通りの高層ビル

 とりわけ、新たな住宅複合施設の公共スペースに大きな注意が払われている。もっとも興味深い設計に、モスフィルモフスカヤ通りの高層ビル、フルンゼンスカヤ通りの「サドーヴィエ地区」、アレクセーエフスカヤ通りの住宅コンプレクス、ワシントンのジョン・ケネディ記念舞台芸術センターの「ロシアの間」などがある。

「サドーヴィエ地区」

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