マルチリンガルラッパー:ヒップホップはロシアの民族的少数派をインスパイアする!

 ヒップホップは世界を一つにする。そしてロシア国内についてもこれと同じことが言える。ロシアの民族的少数派のアーティストはときに独自の言語で歌い、世界的な現象に新しくて魅力的な世界を吹き込む。ロシアにおける真のダイバーシティとは何か、そして真の創造的自由とは何かを教えてくれる、これぞベスト・オヴ・ベストの曲を紹介しよう。

タタール・ヴァイブ

 タタール人はロシア人に次いで2番目に多いロシア国内の民族で、その数は550万人を超え、ほとんどがタタールスタン共和国に住んでいる。伝統的な民族衣装、民謡、そして豊かな文化が現代のタタール芸術とうまく溶け合っている。「タタールカ」(本名:イリーナ・スメーラヤ)は民族的な音楽要素とタタール語、成熟したビートを巧みに織り交ぜ、新しいジャンルのヒップホップを生み出している。代表曲「Altyn」は2016年以降、YouTubeで4,700万回再生されている。イリーナは現在も精力的に活動しており、ヒット曲の中には、センセーショナルなロシアのバンド「Little Big」とのコラボ作品もある。

カフカスより愛を込めて

 スタス・ボコエフはミュージシャンやアーティストの家庭に生まれたわけではない。彼は不幸な経験を経て、運命を切り拓いた。ロシア南部のオセチアでティーンエイジャーだった彼は、ベスラン学校占拠事件で頸部に傷を負いながらも生き残った被害者の一人である。リハビリを受けた後、彼はモスクワに移り住んだが、そこでもう一つの困難に遭遇する。肺炎になり、さらにこれをこじらせたのである。しかしそれでも彼は再び生き残り、それから音楽に生涯を捧げる決心をし、それにより数々の困難を乗り越えることができたという。 

 ボブ・マーリーにインスパイアされたという現在のボコエフのヒップホップ/レゲエ音楽は聴く人々に勇気と希望を与えている。ボコエフは母国語であるオセチア語とロシア語でラップを演奏している。すべてのナンバーはさまざまな形の愛をテーマにしており、家族愛、子どもへの愛、恋人への愛、そして人生そのものへの愛を歌っている。

カルムィク・メロディ部門

 カルムィク共和国はステップ、乾燥帯、半砂漠地域が広がる南ロシアのユニークな地方である。そのような環境を背景に、カルムィクの人々は独自の詩を書き、比類のないヒップホップサウンドを作る才能を持っているのである。

 アディアン・ウブシャエフ(BodonGの名で知られる)はカルムィク共和国の首都エリスタ生まれ。ヒップホップに夢中になったが、西側の音楽をただコピーするのではなく、もっとすごいことをしようと考えた。そこで彼は母国語と民謡を使って、パーフェクトな音楽の形を作ることにした。彼の音楽は、生命、そして東と西の文化、言葉、そして自然が完璧な形で融合する、代々受け継がれてきた遺産について歌われている。

マリ、マリ、マリ

 巨大な森林、美しい大地、ヨーロッパでもっとも長い川であるヴォルガ。これらは、中央ロシアにあるマリの人々の日常生活になくてはならないものである。彼らの母国語、マリ語はフィン・ウゴル語派に属しているが、その音はソフトなラップを作るのにぴったりだ。

 そこで、バンド「У ЕН(ウ・エン)」はそのマリ語で音楽を作り、アイロニカルなやり方で自分たちを紹介している。彼らはマンブルラップを使い、それをリアリティに即したものに再フォーマットしている。ミュージックビデオでは、グロテスクな田舎町と現代の人々、純粋な自然を描き出し、ダウンシフターたち(=仕事や生活のペースを意識的に落として、少ない収入と少ない消費で人生の充足感を得るようなライフスタイルを実践している人々)のパーティがどのようなものかを見せている。

バイカル湖よりも深く

 ロシア極東には多くの不思議がある。ブリヤート人たちはそんな数々の不思議の中、バイカル湖を見つめ、ウランウデの通りを歩きながら生きている。

 ブリヤート人の多くが仏教またはシャーマニズムを信仰、実践してきたが、厳しい自然状況や厳しい都市生活が何年もかけて彼らを強くしてきた。そして生まれたのが、ほとんど戦いのような民謡にインスパイアされたヒップホップである。おそらくそうした理由により、地元のラッパー、「Хатхур Зу(ハトフル・ズ)」のナンバー、「ウギ・ニャス(死など存在しないの意)」は人気を獲得し、チャートで上位を占めている。

ボーナス・トラック

「これは地獄から電話をかけるロシア」

 しかし、ロシアのすべてを描いているのがこの人。ヴィタリャ・アルバトロス(Vitaly the Albatross として知られる)は自信を持って音楽を作り上げている。彼はステレオタイプを笑い飛ばしているのかそれともポストアイロニー的なメッセージを伝えているのか?それはご自身で判断していただくとしよう。

「ロシア・ビヨンド」がLineで登場!是非ご購読ください!

もっと読む:

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる