「スーパープーチン」展、モスクワのUMAM(超現代的美術館) 博物館。2017年12月6日。
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数十点の奇抜な展示物や絵画。ほとんどすべて、人の身長かそれ以上の高さがある。共通点は一つ、すべてプーチンなのだ。中世の甲冑を着て熊に乗るプーチンの彫刻。スーパーヒーロー・プーチン。おばあさんに抱かれたプーチン(これは絵)、石膏でできたプーチンの胸像、巨大なキャンバスに描かれたプーチンの漫画もある。
これは2017年12月に開催された、ロシア大統領をテーマにした展覧会だ。モスクワでは数度目の開催となる。その名も「スーパープーチン」展。これ以前にも、似たような展覧会がモスクワやロンドンで開かれてきた。プーチンがブッダやジャンヌ・ダルク、チェ・ゲバラ、シャーロック・ホームズなどさまざまな人物の姿で展示された(モチーフにされなかった人物を挙げるほうが早いかもしれない)。
これは政治的な注文によるものか、独特の選挙運動に見えるかもしれない(主催者は大統領に対して「ポジティブ」な姿勢を取っているだけだと主張しているが)。実際、「スーパープーチン」展は選挙の直前に開かれた。だが、これに対して一般のロシア人は拒否反応を示さなかった。国や独立系の社会研究所が公表している支持率によれば、プーチンはロシアで愛されている。その高い支持率は長年揺らいでいない。2018年4月に下がり始めたに過ぎない。
プーチン大統領を描いた壁画。モスクワから115キロメートルにあるカシーラ市。2017年10月16日。
AFP「プーチンがいればロシアがある。プーチンがいなければロシアはない」――このフレーズはすぐさま格言となった。
フレーズを考えたのは、当時ロシア大統領府第一副長官だったヴャチェスラフ・ヴォロージン(現在は下院議長)だが、「プーチンは国の化身である」というイメージは、彼の周囲だけでなく国民の間でも人気になった。世論調査から判断すれば、平均的なロシア人はそう考えている。こうした国民にとってプーチンは、「安定の才能」の権化であり、ソビエト国家の残骸を集めて再び「偉大な国」にする人物なのである。
「エリツィン時代と比べれば、彼[プーチン]がしたことは評価すべきだ。ペレストロイカ後の穴からいきなり宇宙へ飛び出すことはできない。まだあまり時間が経っていない。とはいえ、うちや知人宅の冷蔵庫は満杯で、私たちは保養地に出掛け、多くの人が新しい家に引っ越し、みんな車を持ち、これはプーチン政権以前には考えられなかった。」とツアーガイドのユーリー・バハエフさんは人気のインターネット掲示板「The Questions」で話している。「長持ちする製品を作らねばならない。プーチンも永遠ではないからだ。次の大統領は『我慢強い』人の中から登場し、『90年代』かそれ以下の時代が到来するだろう」とアレクサンドル・ルィバコフさん(57歳)も同意する。
「人々は、自分や自分の家族をやっとのことで養っていた時代のことを覚えている」と、プーチンのメディア・イメージの「建設者」の一人である政治戦術家のグレブ・パヴロフスキー氏は一度ならず話している。彼によれば、プーチン人気は主に、給料や年金が数ヶ月間支払われないこともあった90年代の記憶の上に形成されてきた。「今ではそのようなことがないが、それが当然のこととしてではなく、大きな成功として感じられている。」
プーチン大統領を着物姿で描いた壁の落書き。クリミアのヤルタ市。
AFP「Мужик」(ムジーク)。現在ロシア人がこの言葉で意図するのは、意志の強い厳格な男(黙って眼窩でビール瓶の蓋を開け、氷点下40度で散歩に出かけるような男)だ。「本物のムジーク」という言葉は、男性にとっては最上の誉め言葉であり、一般的なロシア人はまさにこのようにプーチンを形容する。
「勇気」「決断力」「力」「自身」「大胆さ」――これらすべてが、平均的なロシア人が自分たちの大統領に認める性質だ。
ロシアがクリミアを併合した当時、プーチンの支持率は長らく80パーセントを下回っていなかった。支持率が史上最高の90パーセントに到達したのは2015年、ロシア軍がテロリストと戦うためにシリアへ向かった年だ。
社会学者らの考えでは、どちらの出来事もプーチンをまさに「ムジーク」にした。「クリミアを取って、私たちは国際社会に挑発し、西側の考えに反した行動に出た」と「レヴァダ・センター」社会文化研究部のアレクセイ・レヴィンソン部長は説明する。「人々には、国が全世界を敵に回しているという感覚があった。大勢の人の目には、まさにこのことがロシアを偉大な強国にし[これが本当かどうかについてはこちらの記事をご覧頂こう]、プーチンを恐れ知らずの強力な指導者にしていると映った。」
「スーパープーチン」展、モスクワのUMAM博物館(超現代的美術館)。2017年12月6日。
AFPプーチンのような人物が、失敗をすることがあるだろうか。おそらくある。だが(平均的な)ロシア人はこれを信じない。大統領の任期中、プーチンの支持率は滅多に国内危機の影響を受けていない。伝統的に、全打撃を被るのは大統領の「指令を遂行しない」内閣だ。
世論調査によれば、プーチンの最大の「罪」は、彼が「普通の人々がどう暮らしているか知らない」ことだ。プーチンはインターネットをしないことで知られている(携帯電話すら持たない)。必要な情報はすべて、毎日秘書が用意するファイルから得ている。そんなわけで、「もしプーチンが何か知らなければ、それは彼に話が通っていないからだ」というのが国民に広く浸透した考えだ。
プーチンの支持率が落ちたのは5回だけだ。うち4回は最近の5度目の下落に比べれば些細なものだ。最近の支持率低下は、大多数の専門家の考えでは、プーチンが国民にとって非常にデリケートな問題である年金改革を公式に支持したことと関係している。だが、支持率の低下はあくまで一時的なものだろう。「彼がこれまでに同じような窮地から脱したのは一度や二度ではない」と「ペテルブルグ政策」基金の会長である政治学者、ミハイル・ヴィノグラードフ氏はラジオ放送「モスクワのこだま」で語っている。
全ロシア世論調査センターのデータによれば、2019年3月、大統領の支持率は過去最低を記録した。32.7パーセントのロシア人しか彼の政策を支持しなかったのだ。独立系のレヴァダ・センターの調査では、信任率はこれを上回る64パーセントだった。とはいえ、支持率は一般的な水準に下がったに過ぎないとレヴィンソン氏はロシア・ビヨンドに語る。クリミアの事件やジョージア(グルジア)での五日戦争の前の支持率も同様だった。
「この安定的な水準でプーチンの支持率は長年維持されてきた。ロシア国民の3分の2が、国家の統一といったものの象徴として大統領を支持する必要があると考えている。いつか支持率をこの水準よりも下げる理由が見つかるかもしれないが、ここ20年間私たちは一度もそれを目撃していない。今のところ人々にはプーチンという焦点が必要なのだ」とこの社会学者は考えている。
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