1950年代後半まで、ソ連国内で、トウモロコシはそれほど栽培されていなかった。状況が変化するのは1959年、当時のニキータ・フルシチョフ書記長がアメリカのトウモロコシ農場を訪問し、農民の一人、ロズウェル・ガーストと出会ってからである。これを機に、ソ連では北方の地域でも、“畑の女王”と言われるトウモロコシが栽培されるようになったのだ。ソ連市民の食事に、コーンフレーク、コーンパン、コーンスティック、パック入りの茹でトウモロコシ、そしてコーン缶が加わるようになった。しかしフルシチョフ書記長の死後、「トウモロコシ」キャンペーンは打ち切られ、それほど熱心に栽培されなくなったが、それ以降も、食生活の中にコーンは残った。
1952年に出版された食に関する有名な本「おいしくて健康的な食べ物に関する本」には、コーン缶を使ったレシピが3つ掲載されている。この面白いソ連の前菜をご紹介しよう。
作り方:
油を引いたフライパンにみじん切りしたタマネギ(1個)を入れ、軽く炒めたら、コーン(1缶)とトマトピュレー(大さじ2)、塩、砂糖を加える。すべて入れたら混ぜ、5分間、蒸し煮する。この間にリンゴを洗い、くし切りにし、芯を取り除いたら、オーブンで焼く。白パンでクルトンを作る。コーンを丸く山にして盛り付け、周りにクルトンとリンゴを添え、新鮮なハーブで飾る。
「トウモロコシ・プロジェクト」の一環として、数年にわたって行われた積極的なプロパガンダにより、ソ連国内ではコーンを使った料理の幅は大きく広がった。食に関する本でも、後に再販されたものの中にはトウモロコシのピュレスープやカツレツのレシピが掲載されるようになった。
作り方:
缶入りコーン(1缶)は肉ひき機あるいはブレンダーにかけて、鍋に移し、水3カップを加えて、沸騰させる。別の鍋に弱火の火にかけておいた小麦粉(2カップ)を入れ、植物油(大さじ2)を加えて、熱した牛乳(3カップ)と混ぜ合わせ、火にかける。沸騰したら、コーンを加え、15分から20分煮る。スープが出来上がったら、ザルで濾し、もう一度、火にかけたら、塩で味を整え、植物油(大さじ2)を加える。クルトンかコーンフレークを添えていただく。
このレシピはソ連では比較的新しいものだが、カツレツや野菜のパンケーキやジャガイモのお焼きを愛するロシアの伝統料理の一つとして、愛されるようになった。
作り方:
缶入りコーン(120g)を鍋にあけ、牛乳(50ml)を入れて沸騰させ、セモリナ粉(10g)、バター(25g)を加えて、5分から10分蒸し煮する。火から下ろし、卵(1個)、砂糖、塩ひとつかみ、刻んだパセリを加えて混ぜて生地にし、カツレツを成形する。パン粉をつけ、両面を焼く。サワークリームを添えていただく。
ザペカンカは材料の量も正確でなくてよいため、残った食材で簡単に作ることができる。ソ連時代はこうした特徴が非常に重宝がられていたが、現在もよく作られている一品である。
作り方:
タマネギ(1個)とマッシュルーム(100g)はみじん切りにし、フライパンで2分ほど炒める。タマネギが透明になったら、ひき肉(700g)を加えて、しっかり混ぜ合わせる。下茹でしたニンジン(2本)は角切りにし、缶入りグリーンピース(大さじ1)、缶入りコーン(100g)、トマトソース(大さじ1)と一緒に、ひき肉に加える。塩コショウで味を整えたら、混ぜて、3分置いておく。
ジャガイモ(10個)は茹でて、ミキサーにかけ、牛乳(100ml)、サワークリーム(100g)、バター(100g)、塩コショウと混ぜ合わせる。植物油を塗った型にジャガイモのピュレを半分入れ、表面を平らに整える。その上に野菜を混ぜたひき肉を乗せたら、残りのジャガイモを上から乗せる。180℃のオーブンで30分焼く。
ソ連時代後半には魚の缶詰やニシン、カニカマを、卵、キュウリ、コーンなどと一緒に使うサラダがいくつも考案された。その中でももっとも一般的なのがカニカマサラダである。
作り方:
お米(100g)は塩少々を加えた水で煮る。カニカマ(200g)とキュウリ(1本)は小さめに切る。キュウリは新鮮なものでもピクルスでもよい。卵(3個)はかた茹でにし、細かく刻む。カニカマ、キュウリ、ゆで卵、コーン(100g)を混ぜる。マヨネーズと塩コショウで味を整える。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。