このサラダは19世紀に、当時モスクワの中心部にあった高級レストラン「エルミタージュ」の料理長だったフランス人シェフ、リュシアン・オリヴィエによって考案された。彼はこのレシピを一から作ったのではなく、当時「マヨネーズ」と呼ばれていた人気料理にインスピレーションを受け、これをアレンジしたのである。「マヨネーズ」は現在わたしたちが知っているような調味料ではなく、一片の魚、チキン、あるいは狩猟肉にプロヴァンス地方のオイルをベースにしたムースを添えたものであった。シェフのオリヴィエはロシア人の心を理解し、ロシア人が持っているものを感じさせつつ、フランスの特徴を加えたものを作ろうとした。そして彼はそれを成功させたのである。現在のオリヴィエ・サラダは彼のオリジナル・レシピとはかなり異なったものになっているが、しかしそれでもロシアのもっとも象徴的なサラダであり続けている。すべてのロシア人がこのサラダの特別な意味を幼いときから理解し始める。オリヴィエが好きではないという人たちでさえも、新年のディナーにとっての聖なる意味はよく認識している。
そこでオリヴィエを正しく作ってもらうために、究極のガイドを用意した。
リュシアン・オリヴィエのオリジナルレシピにはザリガニとライチョウが入っていた。しかしそれは19世紀のことである。レシピは第二次世界大戦終戦後に改良された。国を建て直そうとしていた困難な時代にザリガニとライチョウは手に入るものではなかったからである。そこでこれらの材料が皆がより手に入れやすいものーたとえば「ドクトル・ソーセージ」などに変わった。しかもこのソーセージは、戦争によって、健康を損なった人々の食事に欠かせないものとして推奨されていた。後に、鶏肉や牛肉が出回るようになってからは、これらを主要なタンパク質として使うようになった。その他のバリエーションとしては、エビ、カニ、ヨーロッパウズラなどを使ったものがあったが、クラシカルなザリガニとライチョウのバージョンに勝るものはなかった。しかし大金を投じなくても、上記の何を使ってもおいしいオリヴィエは作れるのである。
材料をバラバラの大きさに切るというのは恐ろしい過ちである。オリヴィエ・サラダを作るときは、すべての材料を同じ大きさ、同じ形に切るのが鉄則である。つまりすべて角切りにする。グリーンピースの大きさを参考にし、よく切れるナイフを使うこと。
マヨネーズを恐れないこと。いくつかのレシピではマヨネーズの代わりにサワークリームやヨーグルトを使っているものがあるが、それはローカロリーのサラダを作る場合である。しかし正直にいえば、古くからあるおいしいマヨネーズに勝るものはない。これについてはリュシアン・オリヴィエ自身が最初から指摘していたもので、わたしたちもこれを変更したりはしない。ただ、すべてほどよく使うことを忘れず、けして入れすぎないこと。マヨネーズも材料の一つであり、他の材料の味を消してしまってはならないのである。
茹ですぎたジャガイモは構造が破壊されるため、材料のないマッシュポテトになって、サラダを台無しにしてしまう。そこでジャガイモを正しく茹でることは非常に大切である。そのためには皮のついたままのジャガイモを冷水から茹で始めることが重要である。冷水をゆっくりと沸騰させ、ナイフが突き刺さるくらいまで茹でる。出来上がったらすぐに水を切って、皮をむく前に室温まで冷ます。
オリジナルレシピでリュシアン・オリヴィエはオリーヴとケッパーを使用した。しかしソ連時代にそれらはロシアの主要な食品であるピクルスに変わった。創造的な人々はカリカリした歯触りの野菜のピクルスやマメ、あるいはリンゴのようなフルーツを使った。ピクルスを選ぶのも選択肢の一つだが、とにかくこの材料を忘れないように。これらの材料はオリヴィエの本質とも言える塩味と酸味を与えてくれる。
オリヴィエはまったく軽いサラダではない。そこでナガネギ、セロリ、リンゴなどのフレッシュな材料をいくつか使うことでサラダをシャキッとさせることができる。またこの新鮮な材料を加えることによって、誰もが大好きな、驚くべきカリカリ感とジューシーさを加えてくれる。
オリヴィエは翌日の方がおいしいというのはよく知られているところである。そこで、バケツいっぱいとは言わないまでも、次の日にもっとたくさん作ればよかったと後悔しないくらい十分な量を作ろう。
サラダがほとんど完成したら、味見をして、すべてバランスが取れているかをチェックしよう。ときどき、ジャガイモが強すぎたり、酸味や塩気が足りなかったり、カリカリ感がなかったりする。味がはっきりしないときは塩を加えること。酸味が足りないと感じたときにはピクルスを足そう。カリカリ感を足したいときは野菜を増やして。お腹を信じて、何か足りないと思ったものを少し足せばよりおいしくなるので、微調整を。
1. ジャガイモとニンジンを用意する。1つの鍋で皮がついたまま茹でる。ゆっくりと沸騰させ、ナイフが簡単に刺せるくらいまで茹でる。茹ですぎないこと!ジャガイモとニンジンが茹で上がったら、すぐに水を切り、室温まで冷ます。皮をむいて、だいたい同じ大きさの角切りにする。
2. 卵を作る。鍋に沸騰した水を入れ、卵をゆっくり1つずつ入れ、10分茹でる。氷の入ったボウルを用意し、卵は沸騰した水からそのまま冷水に入れる。2–3分冷やすした後、皮をむいて、角切りにする。
3. ドクトル・ソーセージを取り、同じ大きさの角切りにする。これがクラシカルな切り方である。ドクトル・ソーセージが好きでないという場合は、鶏の胸肉を代用することもできる。
4. タマネギ、ピクルスも角切りにする。
5. グリーンピースの水気を切る。
6. すべての材料をボウルで混ぜ合わせ、塩、コショウを加えて、さらに混ぜる。マヨネーズ大さじ3を加え、再び全体を混ぜる。味見をして、マヨネーズが足りているか、その他に何か足りていないものはないかもう1度チェックする。足りないものがなければ、どうぞ召し上がれ!
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