正教会の最も典型的で、それと分かる要素はキューポラ(丸屋根、ドーム)だ。それは、正教会特有の8箇所の先端部分をもつ十字架、いわゆる「八端十字架」(ロシア十字)を戴いている。いわゆる「ネギ坊主」型 [3] が最も一般的だ。これは、純粋に実用的な機能に加えて(この形なら雪が積もらない。これは、雪が降るロシアの冬にとって非常に重要だ。大量の積雪が構造物を簡単に押しつぶしかねないからだ)。また、象徴的な意味もある。上が鋭端をなすタマネギ型は、蝋燭の炎に似ている。
ネギ坊主型のドームは、聖ワシリイ大聖堂の後、つまり16世紀半ばからいたるところで用いられ始めたと考えられている。12~13世紀の、モンゴル帝国襲来以前では、多数のドームが兜型 [2] をしていた。
16 世紀から 17 世紀末にかけて、「八角尖塔」の様式のドーム [4] も「流行」し、その天辺には小さな金色のキューポラが輝いていた。また、聖堂にはしばしば、「八角尖塔」様式の付属建造物の鐘楼があった。
もっと後の聖堂には球状のドーム [1] もあり、永遠を象徴している。
ちなみに、ドームの色によって、その聖堂が何に捧げられているかが分かる。
ドームの数も重要だ。
これら以外にも、11 と 15 があるが、どちらかというと例外的なケースである。
ドームは、円筒形のドラム風の構造の上に立っている(ドームは、ほとんどの場合、ドラムよりも直径が大きい)。狭い窓が大抵のドラムに切り込まれている。これは装飾的な要素であるだけでなく、聖堂の重要な光源でもある。窓のないドラムは「首 шея」と呼ばれる。
聖堂の主要部分は、立方体の形になっていることがある(必ずしも正確な立方体であるとはかぎらない。しばしば横や高さが引き伸ばされている)。その場合、主要部分は「チェトヴェリーク четверик」(4つからなるもの)[1] と呼ばれる。
八面体をなしている聖堂もある。こういう構造は「ヴォシメリーク восьмерик」(8からなるもの)[2] と呼ばれる。
ちなみに、多くの聖堂は多層構造をなしている。よくある構造は、立方体の上に八面体が載っているものだ。
聖堂の主要部分には、多数の部分が加えられている。とくに重要なのは、主要部分のちょっと下に付いている、半円形に張り出した祭壇、すなわちアプス(後陣)だ。アプスは 1 つだけではなく、3 つや 5 つのこともある(たとえば、右の写真のように。これは、モスクワのクレムリンのウスペンスキー大聖堂だ)。
聖堂の外観の重要な部分に「ザコマラ」がある。これは、聖堂の主要な壁面の、半円形または「こぶ」の形をなす上端だ。「ザコマラ」は、聖堂の内部構造の形を模している。つまり、もしザコマラがあるなら、聖堂はアーチ型の天井をもっている。
もっぱら装飾的な機能をもつ「偽のザコマラ」もある。それらは「ココシニク」(ロシア女性の伝統的な頭飾り)と呼ばれる。ウゾロチエ様式(マニエリスム、バロック様式のロシア版)の教会では、それらが多数存在することがある。
一つのザコマラを戴く壁の垂直方向の平面は、「プリャスロ прясло」[1] と呼ばれる。多くの場合、ザコマラの延長としての「プリャスロ」の間には、装飾的な柱である「ピリャストル пилястры」(付け柱)[2] がある。
いくつかの古典主義様式の教会では、ザコマラの代わりに「ペディメント」(三角形の切妻壁)があり、ファサードが切妻になっている。
聖堂の閉じたまたは開いたポーチ。古の慣習によると、困窮した人々が施しを求めてここに集まった。
プリデールとは、聖堂の建て増し部分、または聖堂内の特別な区画であり、礼拝のために別個の祭壇がある。そして、プリデールごとにドームがある。たとえば、「赤の広場」の聖ワシリイ大聖堂には 9 つのプリデールがあり、主要なプリデールを囲むように配置されている。その主要なプリデールは、生神女(聖母)庇護祭を記念しており、聖ワシリイは、プリデールの1つにすぎない。
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